- 2024/02/01
ツコウ生の活動紹介~『高校生日本遺産ガイド』松本凛生さん(3年生)
- 内谷愛
「山陰の小京都」と呼ばれる美しい町並みが魅力のちいさなまち、津和野町。
年間約95万人(2020年時点)の観光客が訪れるこのまちは「日本遺産(Japan Heritage)」にも認定されています。
*「日本遺産(Japan Heritage)」とは
地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産(Japan Heritage)」として文化庁が認定するもので、地域の活性化を図ることを目的としています。
・日本遺産ポータルサイトはこちら
そんな津和野町で、高校生日本遺産ガイドとして活動してきた松本凛生(りく)さん。奈良県出身でしまね留学(地域みらい留学)で津和野高校に来ました。
元気な関西弁でいつも場を盛り上げてくれるムードメーカーです。
「地域のひとたちや周りのおとな、同級生、先生、コーディネーターなど関わる人・接する人みんながことごとくちゃんとつきあってくれたおかげで、日本遺産ガイドをはじめ、様々な挑戦ができました」と話す松本さん。
ツコウには、つわの学びみらいの教育魅力化コーディネーターが4名(2024年1月時点)関わっており、高校生のやりたいことのサポートや、総合的な探究の時間の設計等に、高校の先生と協力して取り組んでいます。
今回は、高校生日本遺産ガイドとして活動してきた松本凛生さんの活動を紹介します。
観光地で有名な「津和野町」で、まちが抱える課題に取り組んでみたい!
奈良県出身の松本さんは、中学時代に訪れたとある島が、豊かな自然に囲まれた魅力あふれる場所であるにも関わらず、観光客が少なく閑散としていたことから、どうすれば来島者数が増えるのかを考えるようになったそうです。
そして親元を離れ、知らない土地で生活してみたいという好奇心からしまね留学の説明会に参加。
「留学先の候補地を巡る中で、津和野の道路にたたずむ大きな鳥居の迫力に惹かれ、津和野町への留学をその場で決めました笑」
そして中学時代の経験から、観光地としての津和野町が抱える課題に取り組みたいと思ったそうです。
「私達の町の日本遺産が存続の危機!?ー日本遺産「津和野今昔」の現状とこれからの未来へー」高校生ポスターセッション出場に向けて
当時の教頭先生(地理の教員)が、町営英語塾HAN-KOHで開講していた「国際地理オリンピックを目指そう」という講座に参加し、地理オリンピックに友人と2人で参加したことがきっかけで、もっと地理力を磨きたいと思った松本さん。
その後、日本地理学会が開催している「高校生ポスターセッション」のことを知り、こちらも出場を即決。
2021年に、津和野町の日本遺産認定が取り消しの危機にあったこともあり「私達の町の日本遺産が存続の危機!?ー日本遺産「津和野今昔」の現状とこれからの未来へー」というテーマで探究活動を開始しました。
松本さんが「相方」と親しみを込めて呼ぶ同級生の阪本さんと出場することにし、2人で活動をはじめた松本さんと阪本さん。教頭先生や町内にある津和野町日本遺産センターの方など、多くの方がサポートしてくださいました。
*津和野町日本遺産センターについてはこちら
まずは日本遺産センターを訪問し、どんな取り組みをしているのかについて話を聞いたり、日本遺産について調べたりしました。
そして、日本遺産「津和野今昔~百景図を歩く~」を実際に歩いて実地調査をしたり、「津和野百景図」の認知度を調べるために、高校生や地域の方など約100名にアンケート調査を実施しました。
*「津和野百景図」は、江戸時代が終わるころの藩内の名所、習俗などを描いた
百枚の絵と解説をまとめた画集です。詳しくはこちら
活動する中で、様々な課題が見えてきたそうです。
「百景図に描かれている場所を実際にめぐってみると、けっこうな距離がありすごく時間がかかりました。それなのに観光客には移動手段がなく、問題だと思ったんです。さらに、ガイドがいれば百景図を読み解きながら周れるので、何倍も楽しくなるのではないかと思いました。
またツコウには県外からたくさんの生徒が来ているのに、百景図に興味のある人が少なく、そもそも知らない人も多くてもったいないなと感じました。」
これらの課題の解決に向けて、まずは自身が日本遺産ガイドとしての知識を学び、実際にガイドすることで見えてくるものがあるのではないかと思い、津和野町日本遺産センターでガイドのボランティアを始めました。
津和野町日本遺産センターでガイド活動。人間関係からも多くのことを学んだ
こうして高校2年の7月から、津和野町日本遺産センターでガイドのボランティアを始めた松本さん。
「中学3年生までは人見知りで全然話せなかったんですが、ある時、自分にとって本当に大切な人以外には別にどう思われてもいいなって思ったんです。人目を気にする必要なんてないなって。そう思ってからは、いろんな人と話すのが楽しくなりました。
なのでガイドの活動も、人と話すことが好きだし、人に伝えることをしたいと思って、週末などを中心に週に1~2回くらいのペースではじめ、今でも続けています。」
ちょうどその頃、「SHIMANEみらい協創チャレンジ(以下みらチャレ)」募集のチラシを見て、興味を持った松本さん。
様々なおとなや他校の高校生と繋がることで、自身の活動のブラッシュアップができるのではないかと思い、こちらも参加を即決しました。
「出雲や松江など県東部に友人ができたことや、いろいろな大人や大学生と繋がりができたことがいちばんの収穫でした。その時出会ったメンバーとは今でもお互いに活動を共有したり、助け合ったりしています。」
そしてみらチャレや、ツコウの総合的な探究の時間でもコーディネーターや先生にアドバイスをもらいながら活動を続け、3月のポスターセッションで発表を行いました。
しかしその後、相方の阪本さんとの関係がうまくいかなくなってしまったそうです。
「常に先を見据え、しっかりと策を練ってから動く慎重派の相方と、好奇心旺盛でノリで動く行動派の自分とで、ぶつかることが増えてしまいました。
その中で、否定から入らずまずは相手を認めて、しっかりと話を聞くことが大事だなと気づきました。人の話をしっかり聞こう、その上でより良い方法はないか考えようって思えるようになりました。慎重派と行動派、真逆の僕らだからこそ2人でやることで、もっとなんかできるんじゃないかって。」
この経験は、自分がガイドをした際に、話を聞いた観光客の人や高校生がどういうふうに感じているか、考えているかを聞くことにも繋がっているそうです。相手の話を聞くことがガイドの改善にも活きていると話してくれました。
大学では観光学を学び、今の探究をもっと深堀りしたい
高校3年になり、再び「高校生ポスターセッション」に参加した松本さん。
「県外生視点の『津和野百景図』ー現地調査からガイド活動へー」というテーマでこれまでの活動について発表しました。
「発表に向けてこれまでの活動を整理したことで、もっと日本遺産・地域・観光を軸に深堀りしてみたいと思うようになりました。
そのため大学では、日本遺産に加えて世界遺産についての知識を深めたり、遺産を活用した地域活性についても考えていきたいと思っています。例えば観光客が増えることによって景観の悪化や損壊といった懸念点も生じると思うので、そういった懸念点を減らすために自分に何ができるのかを考えたいです。
遺産センターを中心に様々な関わりをさせてもらったこともあり、津和野に戻ってきて観光と地域活性について取り組んでみたいなって思います。」
いつか津和野町長になって、まちをもっと良くしたいと笑顔で話す松本さんからは、ノリだけではない強い想いを感じました。
「地域の人をはじめ、同級生、先生、コーディネーターなど関わる人みんな、ほんまに良い人ばっかりでした。いろいろ口では言うけど、なんだかんだ最後までしっかり向き合ってくれて、面倒見が良いんです笑。だから大学を卒業したらまた津和野に戻ってきたいと思います。」
また津和野で松本さんの関西弁の元気なガイドを聞ける日を楽しみにしています。