- 2026/03/04
ツコウ卒業生インタビュー(島根県津和野警察署勤務)




- 内谷愛



津和野高校にコーディネーターが配置されてから10年以上が経過し、高校魅力化事業に取り組む津和野高校で学んだ卒業生が、いまどんな生き方を選択しているのか気になりませんか?
卒業後も津和野町に関わり続けている卒業生に、津和野高校での学びや津和野町での暮らしが、「今」の自分にどのようにつながっているのか、なぜ津和野町に関わり続けたいと思うのか等について、お話をうかがいました。
今回は、島根県警の警察官として、地元である津和野警察署で勤務する伊藤弘さんのインタビューを紹介します。
インタビュー動画はこちら
伊藤弘さんプロフィール



津和野町青原地区出身。令和2年度に津和野高校を卒業。
令和3年度より警察学校を経て島根県警松江警察署地域課へ配属。
令和6年度より島根県警津和野警察署地域課パトロール係にて勤務中。
中学・高校と陸上部に所属。真面目で優しい人柄から、先輩・後輩問わず愛されるキャラクター。
地元・津和野町で警察官として働くことの「誇り」
令和6年度の異動で、地元・津和野警察署への勤務が決まった伊藤弘さん。現在は地域課パトロール係として、津和野署管内すべてのパトロールや、地域の見守りを行っています。
「松江警察署で3年間勤務した後、昨年度から津和野町へ戻ってきました。やっぱり地元は落ち着きますね。城山(津和野城跡)からの景色もきれいですし、私にはのどかなこの町が合っていると感じます。
また仕事を通しても、津和野町は『人と人とのつながりが強い町』だと改めて感じています。各地区の住人の方と話をすれば、近所の方の状況がわかり、お互いに助け合って生活されているのを実感します。そんな地域を守る仕事ができていることにやりがいを感じています」
また、初めて地元を離れて警察学校に入ったり、松江市での暮らしを経験したことで、育ててくれた親や地域の方への感謝の気持ちが生まれたという伊藤さん。
「好きな勤務地を選べると言われても、自分は津和野町を選びます」と語るその眼差しからは、故郷への強い愛着と恩返しの思いが伝わってきます。
高校入学当時は「普通」だったが、県外生からの刺激で少しずつ変化
津和野町で生まれ育ち、地元の公立校で幅広く学びたいという理由から、津和野高校へ進学した伊藤さん。入学当初は、特別な目標やイメージを持っていたわけではなかったそうです。
「中学校も陸上部だったので、高校も陸上部に入ろうかな、くらいの気持ちでした。学校説明会の記憶もほとんどないくらいです(笑)。 でも高校に入ってみると、県外から来ている生徒がたくさんいて驚きました。『どんな人たちなんだろう?』とワクワクしたのを覚えています。
特に県外出身の同級生が、地域のイベントに関わったり積極的に町に出ていく姿を見て、もっと自分から動いていいんだ、高校生でもできるんだ、と刺激を受けました」
そして、学園祭での神楽公演に挑戦したり、合唱部としても出演するなど、少しずつ活動の幅が広がっていったそうです。



探究学習での大人との出会い
高校時代の転機の一つが、「総合的な探究の時間」での活動でした。お寺の池掃除や空き家の片付けに取り組む中で、普段の学校生活では出会えない大人たちと関わる機会がたくさんありました。



「当時は小難しいことは考えず、とにかく体を動かすことがしたいと思って活動していました。でも、やってみるとお寺の住職さんや空き家の管理者さんなど、知らない大人と話すのがおもしろかったし、とても新鮮でした。
普段の学校生活で接する 同級生や先生と話すだけでは得られない、新しい考えや視点を聞くことができたのがとても良い経験でした」
HAN-KOHは「勉強ができる人の場所」だと思っていた
ツコウ生の居場所である町営英語塾HAN-KOH(伊藤さん在学時。現在はみらい共創センターHAN-KOH)。しかし、伊藤さんが利用し始めたのは3年生になってからでした。
「HAN-KOHは『勉強する場所』『意識が高い人が行く場所』というイメージがあり、勉強があまり好きではなかったので1,2年生の頃は入ったことがありませんでした。 でも、3年生になり、自習のために使い始めたら、意外と居心地がよくて驚きました。
仲の良い友達が一人でもHAN-KOHを使っていたら、自分も行きやすかったかもしれませんね」



HAN-KOHを中高生のみなさんが利用しやすくなるヒントもいただきました。
祖母と母の背中を見て、警察官の道へ
高校2年生の頃、進路を考える中で「警察官」という仕事が選択肢に上がりました。
「もともと剣道や陸上をやっていたので、体を動かす仕事に就きたいと思っていました。 それに、私の祖母がすごくお世話好きで、料理を近所に配ったり、地域の面倒ごとに首を突っ込んだり(笑)。
母も福祉施設で働いていたし、そんな『人の役に立つ』生き方がいいなと自然と思うようになりました」
周囲の方の紹介で、益田警察署の方から話を聞いたり、津和野警察署の方が高校に来て具体的な説明をしてくれたことも、大きな安心感につながったそうです。
「人の命を守るためには、まず自分の命を守る必要がある。思っていたよりも大変な仕事ですが、事案対応をした際に感謝してもらえると、本当にやってよかったなと思います」



進路に悩んだら、まずは大人と話してみてほしい
最後に、これからキャリアを考えていく中学生や高校生に向けてメッセージをいただきました。
「自分一人で考えても、進路ってなかなか決まらないと思います。もし悩んだら、親でも、親の友人でも、たまたま出会った人でもいいから、いろいろな大人と話してみたらいいと思います。
困った時に人の意見を聞くことや、誰かと話すことは、社会に出てもすごく大事なスキルです。津和野町の人は、話しかければいくらでも話してくれますから、安心して話してみてくださいね。
また働くとなると、自分で段取りを組んだり、先を予測して動く必要があります。それが『人への気遣い』や『目配り・気配り』につながっていくのだと思います。
警察官の仕事も、特別な才能が必要なわけではありません。なりたいという気持ちがあれば、誰でもなれますので、気負わずに、まずは一歩踏み出して、周りの大人と関わってみてください」



今回のインタビューの間にも、スタッフが巻き込まれたトラブルについて話しているのを聞き、親身になって対応してくださった伊藤さん。
誰にでも真摯に向き合い、警察官として地域のために力を尽くす伊藤さん。
津和野町には、デパートや大きな娯楽施設はありませんが、自然が豊かでのどかなので、町の喧騒から離れて暮らしたい人にはおすすめの町だと話してくれました。困ったら「まずは大人と話してみてほしい」というメッセージの裏には、困っている人に親身になり、いつまでも話を聴いてくれる、津和野町ならではの強い「人のつながり」がありました。
地元・津和野町で働くことは、自身を育ててくれた地域への「恩返し」でもあると語るその姿は、とても自然で温かいものでした。
伊藤さんのような若い力が、この町の温かいコミュニティをそっと、そして力強く支えてくれているのだと感じました。



