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津和野高校生川瀬ありささんのプロジェクト「津和野町高校生向けオンラインキャリアイベント」について紹介します

  • 筌場 彩葵
  • 筌場 彩葵

教育魅力化コーディネーターが関わっている津和野高校では、「マイプロジェクト*(通称:マイプロ)」に取り組む生徒も多く、その活動にコーディネーターが伴走しています。

 

マイプロは授業や部活動の範疇を超えた活動のため、教職員が全てサポートするのは難しく、そんなときコーディネーターや町営英語塾HAN-KOHのスタッフがその活動をサポートしています。

 

 

*マイプロジェクト(通称:マイプロ)とは 

 

名前の通り、学習者一人一人が「私のプロジェクト」を創り、実施することを通して学びます。自己対話とプロジェクトの実践を通して、また、その取り組みを仲間と共にシェアする事を通して、

1)学習者の成長と、

2)優れた学習コミュニティの創出、

3)社会イノベーションの起点となるアクション、

その3点を同時に生み出すことができます。

 

本記事では、津和野高校生川瀬ありささんのマイプロジェクト「津和野町高校生向けオンラインキャリアイベント」について、川瀬さんによるプロジェクトレポートを紹介します。

 


 

初めまして!津和野高校3年の川瀬ありさです。

私は東京都出身ですが、地域みらい留学の制度を利用して津和野高校に入学し、3年目を迎えました。

 

〇地域みらい留学についてはこちら  

 

今回は、私が2023年1月22日(日)に実施した「津和野町高校生向けオンラインキャリアイベント」について、活動報告をさせて頂きます。

 

津和野高校「総合的な探究の時間」における活動の一例として、また町営英語塾HAN-KOHの学生の活動に対するサポートの一例として、参考になれば幸いです。さらに津和野高校への地域みらい留学を検討されている方の助けにもなればと思います。

 

 

「津和野町高校生向けオンラインキャリアイベント」の概要

今回のイベントは、津和野町の中高生を対象にオンラインで実施しました。大人の方にご自身のキャリア(仕事だけでなく生活も含めた広義のキャリア)を話して頂いたり、中高生側からは、今興味を持っていることを話したりしました。また、大人と中高生とで生き方について話し合ってもらったりという風に、ざっくばらんに対話するイベントにしました。

 

 

 

背景と目的

企画の背景には、私の地域みらい留学前の実体験と、友人が進路選択する際のきっかけの少なさへの疑問や違和感がありました。

 

まず始めに、私の留学の経緯についてお話しようと思います。
(私は過年度入学生です。地元の東京で高校1年生まで過ごした後、その高校を自主退学し津和野高校に再入学しています。)

 

地元での高校1年生の秋、進路について文系・理系の選択を迫られ非常に困りました。はっきりとやりたいことや学びたいことが決まっていなかった私にとって、とりあえずやなんとなくで大学に進学したり学部を選択したりすることに納得がいかなかったのです。

せっかく大学で学ぶならば「これを学びたいんだ!」というある程度明確な意識を持って進学した方が、学びのモチベーションが高まるのではないかと考えました。

 

 

また、地元の学校で目的なく勉強していた私にとって、学びたいことを見つけるためには圧倒的に経験値が足りないと感じていました。そこで、自分の経験を豊かにするため、またその上での進路選択をするために留学を決意しました。

 

留学してからは当初の目的通り、とりあえずなんでもやってみようという姿勢で多くのことに携わらせてもらいました。活動をする中で大人と関わる機会が多くなっていきました。話しやすい環境を作ってくれる大人だったり、「こうなりたい!」というかっこいい姿を見せてくれる大人だったり、色んな大人と対話することで、今まで私の中で「完璧じゃなきゃいけない存在」だった大人が良い意味で崩れ、現実的かつイメージしやすいものに変わっていきました。

 

将来就きたい職業は決まっていませんが、今すぐに決まらないことは当たり前で、就職の時になっても迷っていいんだという心のゆとりができました。私にとって、津和野で経験した「大人と対話する」ということが、今までもこれからも一番大きな財産になるのではないかと思っています。

 

「総合的な探究の時間」の中で、自分自身の問題意識から探究してみよう、というアドバイスを受けました。そこで、何人かの同級生に希望している進路とその理由についてのアンケートを取ったところ、「親に言われたから」という理由だったり、「その職業が安定していると聞いたから」といった理由が多く、進路選択が自分の意志に基づいていないことに疑問を感じました。そして、希望の進路についての詳しいことや、その他の進路を知らないまま選択するのではなく、それらを知った上で選択してほしいと思うようになりました。

 

経緯が長くなりましたが、私が体験したような大人と話すという経験をできるだけ多くの中高生にしてもらい、自分は何に興味があるのか、自分にとって何が大切なのかを知るなどの自己理解を深め、結果的に進路選択のきっかけや材料になるようなイベントをしたいという思いから企画しました。

 

 

HAN-KOHスタッフの方をはじめ、たくさんの方にご協力いただきました。

 

 

イベント準備と謝辞

企画自体はイベント4か月前の、2022年9月から始めていました。

最初は津和野町民体育館を借りてトーク・フォークダンス形式(フォークダンスのようにどんどん相手を変えて対話をする方法)で実施しようと考えていました。しかし自分自身で考えたり、周りの大人と話したりする中で、なるべく津和野町外の方を呼んだほうが津和野町内の中高生に新しい出会いと新しい考えを提供できるのではないかというアイデアが浮かんできました。

そこで、町外の方も参加しやすいようオンライン形式に切り替えるとともに、HAN-KOHスタッフの方にご協力頂き、町外で活躍されているそれぞれの知り合いの方に、参加のお誘いの連絡をして頂きました。また、私からもお誘いのメールをお送りしました。

 

イベントは日曜日の開催で休日の方も多い中、最終的には、保育士さんや元看護師さん、宇宙について研究されていた方、国家公務員でインドに派遣されている方、津和野高校の卒業生など、11名の大人の方に参加していただくことができました。本当にありがたいことだと思います。

 

また、中高生側の募集についてはイベントの直前まで行い、23名が参加してくれました。学校自体生徒数が多くない中で、この人数が休日に参加してくれたことにとても感謝しています。また、希望の職種の方に話を聞けることを、中高生が楽しみにしてくれていたことも嬉しかったです。

 

筌場さんが当日までたくさん相談にのってくれました

 

本格的にイベント準備をしていく中では、今までにやったことのないことばかりで大変なことが多かったです。大人の参加者との連絡や対話をどのような形式で行うか、イベントの最初の説明はどうするかなど、イベントを企画する大変さは私が所属している「グローカル・ラボ」という部活動で身にしみてわかっていたつもりでしたが、私にとっては初めてのオンラインイベントだったことや、多数の大人を巻き込んでのイベントだったこともあり、より大変で、毎日放課後や部活動後にHAN-KOHに行き準備をしていました。ほぼ毎日一緒に準備をし、私の至らない点を補ってくださったHAN-KOHスタッフの筌場さんには本当に感謝しています。

 

イベントの様子

当日は、教育魅力化コーディネーターの方やHAN-KOHのスタッフの方も数名参加してくださいました。

大人1名+中高生が1〜3名のグループに分かれて、35分間対話をするセッションを2回行いました。

 

対話を見ていると、大人の職業について話しているグループ、中高生の進路について話しているグループ、人生観や人間関係について話しているグループなど、様々なグループがあり、多種多様な対話が生まれていました。

また、イベント終了後には参加者に向けて、このイベントの感想や対話の効果を測るアンケートを取らせて頂きました。回答の一部をご紹介します。

 

<中高生編>

①大人と話すことは自分の進路や生き方にとって効果的だと思いますか?という質問に対しての回答

 

・実際にその進路に就いている大人の方にお話を聞くことで、よりリアルにその職業についている自分がイメージできると思う。

 

・自分の中で思っていたことをちゃんと真摯に聞いてくれたことが嬉しかった。

 

・親と職業について話すことはあるが、初めて会う大人と話すからこそ言えることや、質問することができることがたくさんあるから、新しい興味も見つけることができた。

 

・アドバイスを言ってもらえたので、自分も試してみようと思った。

 

・大人は自分たちの何倍もたくさんのことを経験しているので、経験していないことや知らないことを聞くことは成長につながるし進路や生き方を変えるきっかけになると思う。

 

②今後、大人と話す機会を持ちたいと思いますか?という質問に対しての回答

 

・色んな人と話すことでどういった仕事が社会にどんな影響を与えてるのか知りたい。

 

・自分の将来に向けて、いろんなことに挑戦できる高校生のうちに、大人の方と話をして準備をしておきたいと思った。

 

・今回のようなイベントは大人の方との距離が近く話しやすかったので、またこの形式でやりたい。

 

<大人編>

イベントの感想やアドバイス

 

・所感ですが、高校生が自ら企画したからこそ、参加した同級生がより自由に発言できる雰囲気になったのではないかと思います。大人が同様の企画をすれば、大人と高校生に縦の関係が生まれてしまいますが、今回のイベントでは、明らかにその関係が逆転していたと思います。興味深かったです。

 

・高校生と話す機会なんて滅多にないのでとても楽しかったです!

 

・事前に参加者が知りたいことをまとめてくれていたので話しやすかったです。自由に進行させてもらって、高校生の感じている素直な声を聴けて、参加して刺激になったし楽しかったです。

 

・今回のイベントをきっかけにその後皆さんがどうなったか、考えが変わったかなどをいつか知ることができればと思います。

 

・個人的には、参加されているほかの大人の方のお話も気になります。ブレイクアウトルームに大人を複数入れてみても面白いかもしれません。

 

・話し手(大人)の力量次第なところがあったと思うので、事前のレクチャーが重要だなと感じました。

 

イベントを終えての感想と今後

「イベントの様子」でも書いたように、個人的には、今回のイベントでは多種多様な対話が生まれていたことが良かったと思っています。職業のみにとらわれず、様々な生き方や価値観を共有してほしいという企画当初の目標が達成されたようで嬉しかったです。

 

また、今回のイベントを見ていて世代を超えて対話することの重要性を感じました。普段は近い年齢の人や似た境遇の人とばかり話しがちですが、自分と異なる価値観に触れ視野を広げるには、異世代間の対話が必要だと思います。そのような対話ができる機会をまた設けられたらと思います。

 

今回のイベントが参加者にとって印象深いものになっていたら嬉しいです。

 

(文:津和野高校3年川瀬ありさ「津和野町高校生向けオンラインキャリアイベント」についての活動報告)

この記事を書いた人
筌場 彩葵
教育魅力化コーディネーター (高校担当)
筌場 彩葵
兵庫県淡路市出身。幼少期に周囲と馴染めなかった経験から「”普通”ってなんだろう?」というテーマを抱くようになりました。大学時代に多様な学びの場づくりやファシリテーション、NVC(非暴力コミュニケーション)などを探究し始め、大学卒業後は教育関係のNPO等で、不登校・就職に不安がある・保護者に頼れない・性的マイノリティである、など多様な背景のある子ども・若者のサポート活動に携わってきました。相手を否定せず、感情や想いに寄り添うことを大切にしています。