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コロンビアの社会起業家の方と「平和」について考える交流を行いました

  • 牛木 力
  • 牛木 力

10月15日(水)、南米コロンビアから社会起業家のZackary(ザック)さんとGeovanny(ヘオ)さんが、みらい共創センターHAN-KOHを訪れ、津和野高校生と「平和」をテーマにしたワークショップを行いました。

 

当日は、ツワノセカイ部のメンバーを中心に、約20名の生徒が参加。英語をベースに進行し、当財団のみらい共創コーディネーターが通訳とファシリテーションを担当しました。

 

 

コロンビアで活動する団体「Saltamontes(サルタモンテス)」

 

ザックさんとヘオさんは、コロンビア北部の港町カルタヘナを拠点に、若者支援と地域づくりを行う団体「Saltamontes(サルタモンテス)」を運営しています。

 

Saltamontesとはスペイン語で「バッタ」という意味だそうで、小さくても跳ねる力を持ち、その跳ねた先の動きが次の変化を生む、そんな願いが団体名に込められています。

 

コロンビアでは、長い内戦や麻薬紛争の影響が今も社会に残っています。特に山間部では教育を受ける機会や仕事が限られ、若者が将来に希望を持ちにくい状況があります。

 

Saltamontesは、そうした環境に生きる若者たちが、自分の未来を自らの意思で切り開き、地域社会の主体として動き出し、平和の担い手になることを目指して活動しています。支援されるのではなく、自ら行動し、社会に変化を生み出す存在になることを目指して、地域資源を生かした商品開発等のプロジェクトに取り組んでいます。

 

コロンビアについて紹介するザックさん

 

 

 

「積極的平和(Positive Peace)」という視点

 

ワークショップの前半では、コロンビアの豊かな自然や文化、多様な歴史について紹介があり、生徒たちは興味深く見聞きしていました。カルタヘナのポストカードもプレゼントいただき、会場がとても温かい空気に包まれました。

 

続いて投げかけられた問いは、「平和とは、どんな状態?」でした。

 

多くの生徒は「戦争や争いがないこと」と回答していました。

 

そこでザックさんが示したのが、「平和とは、何かが“ない”状態ではなく、異なる背景を持つ人々が互いを理解しながら、未来を共につくっていける状態のことである」という「積極的平和(Positive Peace)」という考え方でした。

 

争いの不在ではなく、公正さ、共感、創造性、対話が息づく社会こそが、Saltamontesが目指す“つくり続けられる平和”です。

 

 

 

コロンビアの若者が生み出した希望のプロジェクト

 

また、Saltamontesが伴走してきた若者の取り組みも紹介していただきました。

 

●地域資源としてのキャッサバ(タピオカ)を活用した商品開発


地元では価値を見出されていなかった食材に目を向けた10代の若者のアイデアから始まり、現在では複数の家族の収入源となるプロジェクトに発展しています。

 

●アフロ・コロンビア文化を祝う市民イベントづくり


消えつつある伝統文化への危機感からスタートした10代の若者の企画が、今では全国規模の祭典にまで成長しています。

 

 

こうした事例から、生徒たちは「どんな状況でも、若者が希望を生み出すことができる」ことを実感していきました。

ツワノセカイ部の生徒を中心に、これらの取り組みについて英語で質問する姿も多く見られ、会場には真剣で温かな空気が流れていました。

 

 

 

言葉を超えた交流~「身体のまま、心のまま」つながる時間

 

ワークショップ終盤には、コロンビアで流行している音楽に合わせ、ザカリーさんとヘオバニーさんがダンスを披露してくれました。生徒たちも自然と輪に入り、笑顔と拍手が会場に広がっていました。

 

会場にいるみんなでコロンビアのダンス♪

 

 

Saltamontesは、言葉がすべて理解できなくても、人はつながれるという言語だけに頼らない交流そのものを大切にしているとのことで、生徒たちもその交流を体全体で感じているようでした。

 

 

出会いから生まれる変化は、未来へ跳ねていく

今回の交流は、当財団のみらい共創コーディネーターが、アメリカ・フィラデルフィアのSwarthmore Collegeに在学中だったザカリーさんと出会ったことがきっかけで実現しました。時を経て、遠く離れた津和野町の若者たちとSaltamontesの活動がつながったことは、まさに団体名の通り、“跳ねて広がる変化”だと言えます。

 

参加した生徒の感想には、

 

「コロンビアという国について全く知らなかったが、こうして文化や歴史を知ったり、ダンスを一緒にして、興味が湧いたし行ってみたくなった」

 

「大好きなズートピアのテーマソングを歌っている人がコロンビア出身の人だと知り、身近に感じた」

 

「日頃の生活では考えていなかった平和について、改めて見つめ直すいい機会になった」

 

等がありました。

 

 

この交流を通じて、生徒たちは、平和は「守るもの」でありながら、「つくり出せるもの」でもあることや、自分の行動が、誰かの未来につながるということを体感することができました。

 

この記事を書いた人
牛木 力
教育魅力化コーディネーター
牛木 力
津和野町は大好きなまちで、ここに住めているだけでまず幸せです。H28年に津和野に出会うまでは、アメリカで、都市計画家が作る高校生向けプロジェクト型学習のプログラムに参画し、R2~5年度は、山形にある東北芸工大(コミュニティデザイン学科)で教員をしながら、新しい学びのあるべき姿を模索しました。今は世界最大の社会起業家ネットワーク、Ashokaの活動にも従事しています。日々、つわの学びみらいのメンバー、高校生、学校の先生、そして地域の志ある仲間と探究を続けています。