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『つわの哲学対話2025』を開催しました

  • みらい共創センターHAN-KOH
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2025年12月15日(月)に、津和野町で『つわの哲学対話2025』を開催しました。

 

会場は、「哲学」という言葉を創り出した啓蒙思想家・西周氏が学んだ藩校養老館です。

地域の高校生から大人まで、津和野町内外から多様な世代の参加者が計20名集まりました。また、ファシリテーターとして、哲学研究者の永井玲衣さんにお越しいただきました。

 

哲学対話とは、決まった答えを出すことを目的とせず、日常の疑問や違和感をお互いに投げ合い、言葉をじっくり聴き合いながら問いを育てていく試みです。知識の正しさを競うのではなく、「問いを立てる」「感じたことを言葉にする」「相手の言葉を聞く」といった営みを大切にします。

 

◉津和野高校では今年度、「総合的な探究の時間」にて1年生と地域の大人による哲学対話も実施しました。記事はこちら

 

 

 

哲学対話とは?

 

まず冒頭に「この場がどのようなものなのか」を参加者みんなで共有しました。


哲学という言葉は、哲学者だけが使う言葉ではありません。
日々の暮らしの中で、「あれ?」「なんで?」「どうして?」と立ち止まること自体が哲学的な営みです。

 

また、対話とは単に話すことではなく、「聞き合う」「間(ま)を大事にする」ことでもあります。沈黙も丁寧に扱い、焦らず自分の声を紡いでいきます。

 

今回の哲学対話の場では、話す人が「鳥のぬいぐるみ」を持って話し、それ以外の人がじっくりと聞くスタイルを取りました。

ぬいぐるみを持っている間は、話すことも黙ることも自由です。

 

「終わります」と言い次の人へぬいぐるみを渡すことで、互いの声を聴き合うリズムが生まれていました。

 

ファシリテーターの永井さん(写真中央)が話している様子

 

 

 

地域とのつながりと、学びの場としての意義

 

今回の哲学対話には、地元の大人や津和野高校生だけでなく、町外からの参加者まで、多様な顔ぶれが集まりました。年齢や立場を超えて共に学び合い、対話を通じて異なる視点を尊重し合うプロセスは、地域コミュニティの結びつきを育む機会となります。

 

特に、地域の大人たちとの交流は、高校生にとって単なる学び以上の意味を持ちました。多様な価値観に触れると同時に、「自分たちの暮らす町には、どんな大人がいるのか」を知ったり、考えたりすることは、次世代が地域とのつながりを再発見する貴重なきっかけとなったようです。

 

津和野町内外から幅広い世代の参加者が集まりました。

 

 

 

「対話の場で使う自分の名前」を考える

 

対話を始める前に、今日のこの場で使う自分の名前をそれぞれが考え、共有しました。

この名前は、普段使っている名前ではなく、この場での「仮の名前」です。

 

参加者それぞれが、

●好きなもの(猫/みかん など)

●今感じていること(かさかさ)

●ふと思いついた言葉(ハワイ、予算など)

などを名前として付けていました。


こうした少し遊びのある導入によって、緊張がほぐれ、言葉が出やすくなる場の空気が育まれていました。

 

 

日常の問いを出す時間

 

哲学対話は、参加者が日々感じている「なんだろう?」という問いを出すところから始まりました。

出てきた問いには、下記のようなものがありました。

 

●インスタグラムを見て「スピリチュアルって何?」と感じた

●名前のおもしろさ(フィナンシェなど)

●おしゃれの流行や同じ服をずっと着ていることへの感じ方の違い

●言葉の力(言霊や悪い言葉)について

●自分が感じる「嫌だ」と思う感覚の正体

 

どれも日常のささやかな違和感から生まれた問いです。
それを一つひとつ丁寧に出し合い、認め合い、話し合いのベースをつくっていきました。

 

参加者が出した「問い」

 

 

 

「クモの巣に引っかかったって何?」という問いを深堀り

 

みんなが出した問いの中から、投票で一つのテーマを選び、深堀りしていきました。

選ばれたテーマは「クモの巣に引っかかったって何?」という問いで、今回の哲学対話ではこの問いについての対話を行いました。

 

クモの巣は、たいてい目には見えません。


それなのに、「引っかかった」と感じるときがあります。


それは本当にクモの巣なのか、引っかかった感覚はみんな同じものなのか、そもそも何を「クモの巣」と言っているのか。


そんな問いが場の中心となりました。

 

 

参加者からは、

 

「自分が『クモの巣』と思っているモノは、本当にクモの巣なんだろうか」

 

「クモは嫌いだけど、カメムシを食べてくれる存在で見直した」

 

「朝露をまとったクモの巣はすごく綺麗だと思った」

 

「顔に触れると嫌なのは、五感が集まっているところだから?」

 

「クモの糸に香りや味があったら、それほど嫌な気分にならないのではないか」

 

など、多様な視点が出てきました。

 


こうした声を聴き合うことで、「クモの巣」のような一見単純な体験が、身体感覚、文化的なイメージ、言葉の使い方にまで広がっていきました。

 

対話の中では笑いが起きる場面も多くありました。

 

 

 

哲学対話を終えて

 

あっという間に1時間がたち、気が付けば予定の時間が過ぎていました。
今回の哲学対話も、答えを求めるのではなく、問いを育てる時間となりました。

 

参加者からは、

 

「深く話せて楽しかった」

 

「まだ話し足りないので、また続きをやりたい」

 

「初めて参加したが、とても楽しく対話することができた。普段、何気なく気持ち悪い…としか思っていなかったクモの糸が、よく考えてみたり、他の人の考えを知ったりすると、ますます疑問が深まっていって、不思議な感覚だった。他の問いも面白そうなものばかりで、全部話してみたかった」

 

クモの糸というとても身近なテーマから、話がもつれたり転がったり発展したり、とても楽しいあっという間の時間だった。私たちは何にわずらわしさを感じるのか、何を不思議に感じるのか、どうやって”存在する”とわかるのか…哲学って日常のすぐそばにあるんだなあと感じた!」

 

といった感想が聞かれました。

 

 

哲学対話はこれで終わりではなく、日々の問いと共に生きていく営みです。

次回もまた、皆さんと共に問いを重ねていけることを楽しみにしています。

ご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。

この記事を書いた人
みらい共創センターHAN-KOH
みらい共創センターHAN-KOH
津和野高校魅力化プロジェクトの一環として2014年に設立された町営英語塾HAN-KOHは、2025年より「みらい共創センターHAN-KOH」としてさらなる進化の時を迎えています。学習や留学、やりたいことのサポート等これまでの取り組みに加えて、多様な人と関わり、対話し、考え、行動することで新しい価値を生み出し、共に未来を創っていく”みらい共創”の拠点となることを目指します。