- 2025/11/14
津和野高校1年生と地域の大人による哲学対話を実施しました




- 牛木 力



9月16日(火)に津和野高校の1年生約80名と、対話の進行役(ファシリテーター)として地域の方10名にご参加いただき哲学対話を行いました。
哲学対話とは、一つの問いをもとにじっくり語り合い、お互いの考えを聴き合いながら新しい視点を育む取り組みです。知識の正しさを競うのではなく、自分の言葉で話し、相手の言葉に耳を傾けることを通して「気づき」を育てます。結論を出すよりも違いをそのまま受け止め、“モヤモヤ”や“違和感”を大切にします。
津和野高校では、2019年にブリコラージュゼミの一環として初めて哲学対話を実施し、その後もみらい共創センターHAN-KOHや津和野町内にある藩校養老館等にて、課外を中心に哲学対話を継続的に実施してきました。
今回は、12月10日(水)に予定している1年生が自ら講座を企画し、実施する「ブリコラージュゼミ」の準備として、「問いを立てる力」や「安心できる場をつくる感覚」を養うことを目的に、総合的な探究の時間の授業にて行いました。
「問い」を立てる、“モヤモヤ”を楽しむ
当日は数名のグループごとに教室にわかれ、1時間の対話を2回行いました。1回目のテーマはグループのメンバーで出し合って決め、2回目のテーマは「人がやってみたいと思う時はどんな時?」「安心できる場ってどんなところ?」の2つから各グループで話し合って決めました。



最初は緊張ぎみでしたが、対話が進むにつれて、生徒同士が問いかけ合ったり、笑いが生まれたり、自然と進行役を担ったりと、変化が起こり始めるグループもありました。






生徒たちの感想は、
「聞くのが面白かった」
「頭が疲れたけど、悪くなかった」
「色々な考えに触れられて楽しかった」
「一つの言葉でも多様な意味や解釈があることに気づいた」
等さまざまでした。
うまく言葉にならない感想も多くあり、それこそが新しい学びの芽であると感じました。



哲学対話の中では話しきれなかったこと、言いそびれたこと、途中で途切れた話など、その余韻が、次の思考を呼び起こし、ブリコラージュの考え方である「余韻から次が生まれる」に繋がっています。
クロージングでは「モヤモヤを持ち帰る」という言葉で場を閉じました。



哲学するまち、津和野へ
哲学対話の後に実施した進行役の大人の振り返りでは、
「ドキドキしながらもワクワクできるとてもいい時間だった」
「今回で終わらず、何回か繰り返すことで、さらに深まっていくのではないかと思った」
「設計の工夫がまだまだ必要かもしれない」
といった感想がありました。
今回哲学対話にご協力いただいたファシリテーターのみなさんは、その場にいる誰もが安心できる場をつくり、対話の場を支えてくださいました。そんな大人が自然と関わり合いながら、町のあちこちで「対話」という文化を育てているのが津和野町だと改めて強く感じた時間でもありました。人と人が向き合い、聴き合いながら学び合う静かな力がこの町には息づいています。



問いとともに生きていく
近年、津和野高校では、学びを言語化したり、成果を可視化したりする場が少しずつ増えてきています。一方で、「モヤモヤのまま残る時間」をつくることは、簡単ではありません。
今回の哲学対話を企画・運営した教員や私たちみらい共創コーディネーターも、高校生の頭や心の中で一体何が起きるのか、とてもドキドキしていました。
「問いとは何だろう?」
「探究の問い」と「哲学の問い」は同じなのか?
「精度の高い問い」とは何を意味するのか?
今回の哲学対話を通して、私たち運営側にもまた新しい問いが生まれてきました。そしてそれこそがとても大切なことだと思っています。
今回の哲学対話で実践的に学んだ”問いを立てる力”を基盤として、12月10日(水)には1年生自身が講師となって興味関心ごとをテーマに講義を実践する体験講座「ブリコラージュゼミ」や、2年生で取り組む探究活動へと学びをつなげ、発展させていきます。


