- 2024/10/22
ツコウ2年生の探究活動「ツコウセッション」の3回目を実施しました!
- 牛木 力
津和野高校(ツコウ)では、「やってみたい」を「やってみる」ことを大切にし、「総合的な探究の時間」をT-PLANという名前で一貫したプログラムとして設計・運営しています。
T-PLANでは、以下の3つの力を育てることを意識して取り組んでいます。
①「今、ここにあるもの」に気づき、それを活かす→資源や機会を発見し、生かす力
② 自分にあったやり方で社会に関わる→社会参画する姿勢や力
③ 経験したことを言葉にして表現する→学びを言語化する力
・ツコウの「総合的な探究の時間」の全体像についてはこちら
・1年生の探究講座”第2回ブリコラージュゼミ”の様子はこちら
2年生の探究活動「ツコウセッション」とは!?
地域の中で学びを深めたり、主体的に挑戦することを促すことを目的に、「総合的な探究の時間」の中で全5回の探究活動「ツコウセッション」を実施しています。
個人でプロジェクトや探究活動を進めるか、拠点となる地域(公民館)に出向いてチームで活動していくかを自身で選択しており、現在2年生の約6割は個人の探究活動に取り組み、約4割の生徒は高校から離れた4つの公民館に分かれて活動を行っています。
*「ツコウセッション」開始当初は、津和野公民館も含めた青原、畑迫、日原、左鐙の5つの公民館を拠点に活動していましたが、現在は、ツコウから歩いて行ける津和野公民館は常駐型の拠点にはせず、個人の探究活動内容に応じて津和野公民館を活用させていただいています。
2年生では、1年生で見つけた興味関心=「やってみたい」という想いや、今自分ができること、周囲から求められていること(地域の課題等)について、自分なりの社会との関わり方を模索し、実践しています。
そして、そこで得た学びを振り返り、言葉にしていく過程で自己理解を深めていきます。
また、地域の人と関わる中で、協働性やコミュニケーション力を育んだり、地域の役に立つ喜びを感じることで、自己肯定感を持って社会に関われるようになることを目指しています。
〇6月13日(木):1回目のツコウセッション
各公民館を拠点とした活動では、地域を知るためのフィールドワークを行い、個人の探究活動はそれぞれの計画に沿った活動を展開しました。
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〇7月16日(火):2回目のツコウセッション
各公民館を拠点としたグループ活動では、1回目のフィールドワークで関心を持った施設を訪問して交流したり、今後のイベントの企画提案や話し合いを行いました。
個人の探究活動では、1年生の時の探究授業を通して興味関心を抱いたプロジェクトを実施した生徒もいました。
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拠点となる各地区の人や資源の特色を活かした活動を展開!
第3回目の「ツコウセッション」は、9月12日(木)に実施しました。
1、2回目はスタートアップ期間として、手探り状態で活動を模索する生徒が多かったのですが、3回目となる今回は各公民館で具体的な活動が始まり、さまざまなストーリーが生まれました。
青原公民館では、地域の行事を実施した際に子どもたちが途中で帰ってしまうことが多いため、地域の方より「小さな子どもでも最後まで楽しめるイベントを企画し、実施してほしい」という依頼がありました。
生徒たちが話し合った結果、地元出身の高校生から出たアイディアで『足つぼマットリレー』を行うことに決定し、11月の実施に向けて動き出しています。
この企画では、ギネス記録も視野に入れているとのことで、今後の展開が楽しみです。
畑迫公民館では、「小さな拠点」と呼ばれる住民の集う場や宿泊施設を運営する青木さんに、石窯でピザを作る方法を教わりました。
また、別の生徒たちは農家さんに栗園に連れて行っていただき、その後、栗を使ったスイーツ作りに挑戦しました。
薪割りや火起こし、栗の扱いなどを、地域の方が鮮やかな手捌きで進めていく一方、自分たちがやってみるとスムーズにできず、地域の方が持つスキルの高さを実感することができました。
火起こしを担当した生徒は「少し薪を奥に入れるだけで(空気が届かなくなるので)火が消えて、でもブロアーで空気を送り込むと消えていたように見えた火が急に燃え上って、こんな体験は初めてだった。バランスよく火を起こしていくのが難しくて、ずっとやっていたいと思うくらい奥が深いなと思った。」と話してくれました。
日原公民館では、地域の方々と一緒に昼食を楽しみながら和やかな雰囲気で雑談をした後、3つのグループに分かれて活動しました。
日原地区のシンボルでもある清流高津川に行き、自分の気持ちを言葉にして話すことに挑戦したグループや、公民館主事さんと日原のまちを散策したグループでは、自分たちのできることと地域との接点をもう一度模索することに取り組みました。
そして、日原小学校の子どもたちと交流したいという生徒の声から学童を訪れ、子どもたちとドッジボールで交流を深めました。帰る頃には子どもたちから「次はいつ来るの?」と声をかけられ、高校生が照れながらも嬉しそうにする場面が印象的でした。
そして、10月に行われるにちはら天文台のイベントで、子どもたちを対象にしたものづくりワークショップを企画しているグループは、にちはら天文台を訪れて関係者との打ち合わせを行い、イベントの準備に取り組みました。
左鐙公民館では、保育園を訪れ園児たちと一緒に昼食づくりを行いました。自分たちで火を起こして料理をするのが初めてだった生徒もおり、貴重な体験となったようです。
午後は公民館の方と一緒に川遊びを楽しみ、鮎をごちそうになりました。また、前公民館長さんと現公民館長さんに竹を使った水鉄砲の作り方を教えていただき、みんなで水鉄砲作りにも挑戦しました。
こちらはなんと、高校生からのリクエストに答えて、水鉄砲の作り方を学んでから教えてくださったとのことで、左鐙のみなさんの温かさに触れた1日となりました。
各公民館を拠点とした活動では、地区の魅力や特色が浮かび上がるだけでなく、そこで活動を支えてくださる方々の温かさや個性も感じられる時間となりました。
個人の探究活動でも、人との出会いやつながりが学びに。
高校を拠点に個人で活動する生徒にも、それぞれ出会いや成長がありました。
演技についての探究活動に取り組んでいる矢野さんは、朗読に使用する本を探しに町内の図書館を訪れたところ、中学生の頃部活動でお世話になった先生が司書として働いておられ、久々の再会に盛り上がりました。その後訪れた高校の図書室では、司書の方から自身の希望に合致する星新一さんの本を紹介してもらうなど、本を巡って素敵な出会いやつながりが生まれていました。
様々な人の人生の歩みを一冊の本にするため、地域の人にインタビューをする活動に取り組んでいる阿部さんは、日原地区にある障がい児の支援や訓練を実施する施設”放課後等デイサービスつくしんぼ”を訪問しました。職員の方にインタビューをし、子どもたちと遊ぶ中で、周りの大人たちから「関わり方が上手だね」と褒められ、嬉しそうに笑顔で帰ってきました。
またこの日は、高大連携の一環で島根県立大学の先生が活動見学に来られていました。
島根県立大学の先生からは、
「活動の中に探究のタネがたくさんありました。ごく身近なところから素朴な疑問、気づき、気になるところが見つかれば、ぐっと面白い探究ができると思います。
一つの活動の中にも多くの切り口があるので、どの切り口でも良いのでそれを突き詰めていってもらえたらと思います。」
というコメントをいただきました。
*高大連携とは
島根県が推進する高校と大学が連携した取り組みのことです。
津和野高校では高校生の探究活動の質を高めるため、地域における活動などを専門に扱う島根県立大学地域政策学部の先生方からアドバイスをいただいています。
探究活動の”セッション”という言葉に込めた思い
“セッション”という言葉には「同じ時間と場所を共有し、その場に集まった人たちだからこそ生まれる特別な体験や学び」という意味が込められています。
3回目のセッションとなったこの日は、公民館を拠点に活動した生徒たちも、個別に活動に取り組んだ生徒たちも、人とのつながりをたくさん感じ、支えられながらそれぞれの場所で特別な瞬間をしっかりと感じ取っていました。
個人で探究活動を行う生徒も、公民館で活動を行う生徒も、2学期に入り活動が活発になってきています。
今後、地域でのイベントを企画している生徒や、1年生向けに授業を行う予定の生徒もいます。一方で、ただ自分がやりたいことをやるだけではなく「人のためになるとはどういうことか?」といった問いに挑んでいる生徒もいます。
地域でヒト・モノ・コトと関わる中で、自分はどのように関わり、社会の中でどんな役割を果たせるかといったことを肌で感じながら、将来の在りたい姿をイメージしていってもらえたらと思います。
次回のツコウセッションは11月5日(火)に実施します。
引き続き高校生の活動を温かく見守っていただければ幸いです。