- 2023/09/29
「幼保小の架け橋プログラム調査研究事業」展開中です!
- 太田幸輔
津和野町は令和4年度より、文部科学省事業「幼保小の架け橋プログラム調査研究事業(以下、架け橋プログラム)」に取り組んでいます。
この事業は、令和4年度からの3年間、架け橋期のカリキュラムの開発や実施等に取り組む全国19の自治体が採択され取り組んでいるもので、津和野町も選ばれています。
津和野町ではこの架け橋プログラムの事務局を教育委員会と、つわの学びみらい所属の保小連携コーディネーターが務め、展開しています。
幼保小の架け橋プログラムの目的は?
「幼保小の架け橋プログラム」は、子どもに関わる大人が立場を越えて連携し、架け橋期(義務教育開始前後の5歳児から小学校1年生の2年間)にふさわしい主体的・対話的で深い学びの実現を図り、一人一人の多様性に配慮した上で全ての子どもに学びや生活の基盤を育むことを目指すものです。
3年間の調査研究事業を通して、カリキュラムの作成をはじめ、園や学校における体制づくり、自治体における支援体制づくり、プログラムの普及等を行います。
- 文部科学省「幼保小の架け橋プログラム」webページはこちら
津和野町における「架け橋プログラム」実施の背景
令和2年に、津和野町に全国初となる保小連携コーディネーターが着任しました。
その背景には、小学校の学習指導要領に幼児教育との接続のあり方について明言されたことを受け、幼児期やその接続についてもっと力をいれていこうという教育委員会の方向性がありました。
また、津和野高校の統廃合の危機からはじまった教育魅力化・活性化事業が、中学校や小学校、そして「0歳児からのひとづくりプログラム」へと展開していく中で、行政側のつながり・接続の必要性や、管轄の違いによる課題等がでてきたことなども背景の理由としてありました。
そのようにしてスタートした保小連携の活動ですが、取り組む中でいくつかの課題もみえてきました。例えば、年に一度実施される保小連絡会(保育園と小学校双方の先生による情報共有等を行う会)が時間的な制限もあり、支援が必要な子どもたちに関する情報共有だけで終わってしまうことが多くありました。それ自体はとても必要な時間ですが、「学校区で育てたい子ども像」や「目指したい方向性」などについて、お互いの共通理解を持つ場としては十分とはいえませんでした。
その解決策として、連絡会の実施回数を増やしたり、連絡会のテーマを「保育園の先生が本当に聞きたいこと」に設定して開催したりしてきました。それにより、大人同士のつながりができてきました。その次のステップとして、子どもたちをつなぐ環境づくりに着手しようといったタイミングで「架け橋プログラム」事業の存在を知り、公募採択を受けて今に至っています。
これまでの取り組みに加え、「架け橋プログラム」の展開を通して、保小連携コーディネーターが掲げている「小学校入学が教育のスタートではなく、保育園での育ちを学びと捉え、繋がれていく環境をつくる」というミッションに挑戦しています。
架け橋プログラムで掲げているビジョンは、「子どもたちが安心して生活ができ、探究心が育まれる環境を創る」こと
架け橋プログラムの1年目に、テーマを「対話」「協働」「探究」の3つに設定し、
津和野町における架け橋プログラムのビジョンの策定を現場の先生方や有識者とともに行いました。
なお津和野町では、架け橋プログラム開始前から架け橋期に関わる課題にともに取り組んでいた背景もあり、日原小学校区(1校3園)をモデル地区に調査研究を進めています。
「子どもたちが安心して生活ができ、探究心が育まれる環境を創る」というビジョンをもう少し具体的に紹介します。
〇子どもたちが安心して生活ができる:
ここで書かれている「安心」とは、安心して話せる、自己表現ができる、話をきいてもらえるなど、生活のあらゆる場面での安心を指しています。そして、この「安心」は、おとなの関わり方や、言葉のかけ方で変えられると考えています。
〇探究心が育まれる環境を創る:
保育園までの学びや体験など、子どもたち一人ひとりの興味関心やこれまで築いてきた学びの土台が、小学校にあがっても引き継がれる環境づくりに挑戦します。
ビジョンの主語は「おとな」であり、声掛けや視線なども含めたおとなの関わり方のすべてが、子どもに大きな影響を与えること、そしてそのことをおとなが意識し、覚悟をもって関わることが重要なのではないかと考えています。
架け橋プログラムの目標はこのビジョンを「文化として根付かせること」
「子どもたちが安心して生活ができ、探究心が育まれる環境を創る」ためには、先生の異動など関わるおとなが変わっても、この環境を持続していけるように、園や学校に文化として根付かせることが重要だと考えています。そのために、プログラム実施期間である3年間で、カリキュラムを作成し、実施・検証を行い、町内全域で持続していける体制づくりを行うことを目標としています。
プログラム1年目となる令和4年度には、「保育園と小学校」という縦のアプローチに加えて、「保育園同士」という横のアプローチにも取り組みました。異なる園の園児が集まる中で、各保育園の先生による園児への声がけや接し方について知ることがねらいでした。
終了後にその意図や理由をふりかえり話し合いを実施することで、子どもたちにとってよりよい言葉がけとは何なのか?について考えを深めることができました。
縦と横のアプローチを経て、そこから出た意見から仮説をたて検証しました。
その中で下記4点の重要性を認識しました。
①環境を考えることからはじめること
②指示→対話への転換をおこなうこと
③主体的に取り組める保育や授業をおこなうこと
④共同・協働は子どもたちからつくられること
2年目である今年度は、上記4点をとくに意識しながら、「自らの好奇心から始まる学び」からスタートできる環境がつくられるカリキュラム作成に向けて話し合いと実践を繰り返しています。また、OECD(経済協力開発機構)が提唱しているAARサイクル(より良い未来の創造のために必要な力を育むサイクル。見通し「Anticipation」、行動「Action」、振り返り「Reflection」を繰り返します)を取り入れ、実践と振り返りのスピードを高めながら、まずは大人自身が楽しみながら探究する組織体制で進めています。
今年度中には津和野版架け橋カリキュラムを作成し、R6年度から津和野町の全地域で動き出せる体制をつくることを目標にしています。
津和野町教育委員会と保小連携コーディネーターが、現場の先生方とともに取り組むこの「架け橋プログラム」は、
わたしが変われば まちが変わる
まちが変われば 世界が変わる
その「はじめの一歩」を踏み出しています。