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「まち全体が学びの場」コミュニティーキッチンsome moreってどんなところ?

  • 内谷愛
  • 内谷愛

津和野町の中心から少し離れたところにあるコミュニティーキッチンsome more(サムモア)。

 

JR津和野駅から津和野高校まで徒歩約20分ですが、津和野高校からさらに徒歩約20分かかるという決して便利の良い立地とは言えない場所にあるのに、なぜか人が集まる不思議な空間でもあります。

 

今回は、some moreのオーナーであり、ここを拠点に様々な取り組みをされている國方あやさんにお話を伺ったので紹介します。

 

 

 

はじまりはおとなの遊びから生まれた「厨ファミリア」

 

実はsome moreとしてオープンする前、ここは「厨ファミリア(クリヤファミリア)」として2016年7月から始動しており、様々な人が活用していました。

 

厨ファミリアのはじまりのきっかけは、3人のおとなのアソビゴコロだったと國方さん。

 

東京から移住してきた國方あやさんと、津和野町で種苗店を営む俵志保さん。食やアートを通じて子どももおとなもワクワクできる場がほしいと意気投合。

 

そしてちょうどその時、津和野高校の魅力化コーディネーターだった中村純二さんが、高校生の「地域の人と交流できる場や、自分たちが集まれる場をつくりたい」という想いを繋げ、閉館したユースホステルを高校生や地域の人たちと一緒に改修し、「厨ファミリア」を立ち上げたそうです。

 

写真左から國方さん、中村さん、俵さん

 

 

“厨ファミリア”という名前は、スペインの「サクラダ・ファミリア」に由来し未完成の場を意味しているそうです。

 

「人と人がつながる場」「アイデアや可能性を生み出す場」「はじめの一歩を踏み出す場」として、創造し続ける、広がり続ける、安心して失敗できる場として育っていってほしいという願いが込められているとのことです。

 

 

自然に囲まれた厨ファミリア。ニワトリの鳴き声も心地よい

 

 

厨ファミリアでは週替わりで地域の人がシェフとしてキッチンに立ち、地元の食材を使った「モク曜日の昼餉(ひるげ)」を毎週木曜日のランチタイムに20食程度提供していました。

 

様々な年代、国籍、職業の人がシェフとして腕を振るうランチは毎回大人気。そこに集う人たちは地元の人、移住者、旅行者などさまざまで、知らない人同士でもいつの間にか交流がうまれている、そんな空間でした。

 

 

イノシシ精肉店で働く女性が提供したイノシシ料理は舌や耳まで丁寧に調理

 

 

マダガスカルに住んでいた経験がある方提供のマダガスカル料理だって津和野で味わえる

 

 

*厨ファミリアについての記事(by ONESTORY)はこちら

*厨ファミリアのfacebookページはこちら

 

 

 

「厨ファミリア」から“some more”へ

 

厨ファミリアはオープンから3年を経て社会情勢の変化や立ち上げメンバーの環境変化などもあり、惜しまれつつ幕を閉じました。

 

そんな時、國方さんが発信したメッセージは

 

「美味しい愉しい美しい をもうすこしおかわりしたい

厨ファミリアはお終いになりましたが

遊びから始まったそのわくわく感は色濃く場に宿ります

 

つづきをどうするのか

頭で考えても固くなるばかり

 

美しい愉しい美味しい心地よい と感じるコトやモノを大切にし

枠にとらわれず もうすこし遊びたいとおもいます」

 

というものでした。

 

 

 

 

some more =「もうすこし」「おかわり」という意味。そうして2019年7月に“厨ファミリア”から“some more”という名のコミュニティキッチンとして再スタートしました。

 

*some moreのfacebookページはこちら

 

 

 

もともと東京ではカフェを経営しており、独学で学んだ料理も提供していた國方さん。東日本大震災をきっかけに津和野町へ移住したのを機に、暮らすことや食べることの本質を見直したいと思ったそうです。

 

「some moreでは『食』をいろいろな人にいろいろな形で体験してもらえたらなあと思っています。まずは手を動かしてみる、時間をかけて、やってみることから『食べること』について考えたり感じたりする機会を生み出したい。

 

そういう体験が、『おいしい』の意味を深めたり、レシピとか『こうでなければならない』からの解放にもつながると思っています。」

 

と穏やかに話してくれました。

 

いつでも誰にでも自然体の國方さん

 

 

 

「食」を中心とした学びの場「アルモンデ食堂」を開催中

 

2022年からsome moreで開催している「アルモンデ食堂」。

このユニークな名前は、持ち寄ったものや地域から譲ってもらった食材などあるもの(あるもん)を使ってつくる食堂、という意味からきているそうです。

 

子どもが好きな時に好きなだけいれるような居場所があったらいいよね、でも子どもだけのための場所というわけではなく、いろんな人が混ざり合う空間があったらおもしろいよね、というような想いから、地域の方が中心となって始め、現在は國方さんを含めた地域の方4~5名で主に運営しています。

 

 

 

「食堂」にした理由は、ただ食べに来るだけでもこの場に来る理由になるし、「食」を通して様々な交流や体験が生まれるのではないかと思ったから。

そのためアルモンデ食堂では、子どもがふらっと一人でも来れるようにと高校生以下は無料、おとなも金額は定めず寄付形式で運営しています。

 

開催は月に1~2回程度(月曜日と土曜日)、食材は地域の方からの寄付がほとんどだそう。その日集まったメンバーがその日ある食材を見て、作りたいもの、得意なものをつくっています。

 

 

津和野の野山・田畑でとれる野菜をたくさん頂き、今日はなにつくろう?

 

 

 

「実際に食堂を開催してみると、赤ちゃん連れの方から高齢の方までいろんな世代の方が来られて、予想外でした。

 

普段は交わることのない人とのごちゃ混ぜの時間のなかで、料理の技や暮らしの知恵、様々な価値観に触れること。そうして育まれる安心感は、今この時代にこそとても大切なことだと感じます。

 

 

おいしい食事に大変身。ビュッフェ形式で好きなだけどうぞ

 

 

子ども同士で遊んだり、少し大きな子が赤ちゃんのお世話をしてくれたりと、ごちゃ混ぜ

 

 

 

アルモンデ食堂が訪れる人みんなにとって、誰かと一緒に食事をする愉しさだけでなく、食を通した学びの機会や様々な世代・価値観に触れる場になっているからこそ、毎回多くの人が集まるのかもしれませんね。

 

・アルモンデ食堂のfacebookページはこちら

 

 

どなたでもどうぞ「月曜日のフリースペース」

 

アルモンデ食堂と同時期にsome moreではじまった「月曜日のフリースペース」。

アルモンデ食堂の運営メンバーが、毎週月曜日に開催しているフリースペースです。

 

「アルモンデ食堂開催日は、日によっては座るところがないくらい多くの人で賑わい、かなり騒々しい日も多いから。もう少し落ち着いた空間で、ゆっくり子どもと向き合える場があったらいいよねっていう話からはじまりました。まちにそういう場所もないし。」と國方さん。

 

平日の10時から15時までの開催時間ということもあり、昼食はその日そこに来た人たちが作りたいものを作り食べているそうです。

 

この日はパンを焼きました

 

 

それぞれがやりたいことをやる日もあれば、誰かがやってみたいことを一緒にやる日もあるし、何もやらない日もあっていい。例えば流しそうめんをやったり、スイーツを作ったりと、その日そこに来た人によって毎回過ごし方も変わります。

 

子どもたちが花を料理に見立てて貝殻に盛り付けて遊んでいました

 

 

各々がありのままに、各々で折り合いをつけて過ごす場です。

 

 

ゲスト講師を招いてアートを楽しむことも

 

 

 

津和野高校総合的な探究の時間「ブリコラ₋ジュゼミ」での講座

 

津和野高校1年生の総合的な探究の時間で実施している「ブリコラージュゼミ」。

ブリコラージュゼミでは地域の方に講師になって頂き、津和野のヒト・コト・モノとの出会いを通じて、自分自身がどんなことに興味関心があるのかを探すこと・気づくことを目的としています。

 

・津和野高校総合的な探究の時間についてはこちら

 

 

その中で國方さんは、食を知ることをテーマとした講座をsome moreで開いてくれています。講座では近隣の農家さんの野菜を収穫させていただき、一皿のごちそうに仕上げる過程を通して「こうでなければならない」や「これがないとできない」といった思考の枠を外してもらえたらと考えているそうです。

 

そのため、講座にはレシピもなければこれといったルールもありません。

 

「思ったようにいかないことを面白いと思えたり、その中で学ぶってなんだろう、教えるってなんだろうということを高校生も自分自身も考えていけたらいいのかなって思ってやっています。

 

料理に限らず、学校生活など日常で悩んでいることも『こうでなければならない』から視点を少し変えてみたら楽になるんじゃないかな。」

 

野菜を収穫させてもらい、思い思いに調理します

 

 

自分たちで大豆の種を蒔くところから「味噌づくり」に挑戦中

 

 

 

國方さん自身が、本当にそうだろうか、ああかもしれない、こうも考えられるかもって揺らぎながら生きていると話してくれました。それは弱みでもあり、同時に強みでもあるのだと。

 

そして國方さん自身がその揺らぎを面白がっているからこそ、some moreを拠点としたさまざまな面白い取り組みが生まれているのかもしれません。

 

「生きてるだけでまるもうけだって思っています。いま、生きていることが楽しい。」

 

大切なことを思い出せる、大切なことに気づかせてくれる。

 

some moreに惹きつけられる理由がここにあるように感じました。

 

この記事を書いた人
内谷愛
広報
内谷愛
北海道から広島まで、日本各地で過ごした幼少期。民間企業勤務時に海外の文化に接して刺激を受け、約15か国を旅しました。もっと現地の人と関わりたくて、ワーホリでオーストラリアへ行ったり、ボランティアでアフリカへ。そこでの生活を通して、幸せや豊かさ、自分がどう生きたいのかを考えるようになりました。国際理解教育に携わり、団体・高校等でのコーディネーターを経験。キャンプと旅と音楽が好き。広報を通してみなさんとつながれたら嬉しいです。